「麻疹(はしか)やおたふくかぜのように、一度かかったら、もう二度とかかることはない」。突発性発疹に対して、多くの人がそのようなイメージを持っているかもしれません。我が子が一度、高熱と発疹、そしてあの壮絶な不機嫌を乗り越えたのだから、もうあの経験はしなくて済む、と。しかし、実はその認識は、半分正しく、半分は間違っているのです。ごく稀ではありますが、子どもは「二度、突発性発疹にかかる」可能性があります。この少し不思議な現象を理解するためには、突発性発疹の原因となるウイルスの正体を知る必要があります。突発性発疹を引き起こす主な原因ウイルスは、「ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)」です。ほとんどの赤ちゃんが、生後6ヶ月から1歳半頃までに、このHHV-6に初めて感染することで、典型的な突発性発疹を発症します。そして、一度感染すると、体にはHHV-6に対する免疫(抗体)が作られるため、同じHHV-6によって再び突発性発疹を発症することは、基本的にはありません。ここまでは、一般的な認識と一致しています。しかし、問題なのは、突発性発疹を引き起こすウイルスが、もう一種類存在するという点です。それが、「ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)」です。このHHV-7も、HHV-6と同様に、高熱とそれに続く発疹という、突発性発疹の症状を引き起こします。そして、HHV-6の免疫は、HHV-7の感染を防ぐことはできません。つまり、一度目にHHV-6による突発性発疹にかかった子どもが、その後、別の機会にHHV-7に初めて感染した場合、「二度目の突発性発疹」として、同様の症状を経験することがあり得るのです。一般的に、二度目の突発性発疹は、一度目に比べて症状が軽かったり、発疹がはっきりしなかったりと、非典型的な経過を辿ることも多いと言われています。また、ほとんどの子どもは、3歳頃までには、このHHV-6とHHV-7の両方に感染し、免疫を獲得してしまうため、幼児期を過ぎてから突発性発疹を心配する必要は、ほとんどなくなります。結論として、突発性発疹は二度かかる可能性はありますが、それは決して頻繁に起こることではありません。万が一、再び同様の症状が出たとしても、「そういうこともあるのだ」と知っておくだけで、保護者の心の準備は大きく変わってくるはずです。