整形外科で手根管症候群と診断された後、具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。治療法は、症状の重さや、日常生活への支障の度合いによって異なりますが、基本的には、まず体に負担の少ない「保存療法」から始め、それでも改善しない場合に「手術療法」が検討されます。保存療法の第一歩は、「安静」と「生活指導」です。手首に負担のかかる作業(長時間のパソコン操作、工具の使用など)をできるだけ控え、手を休ませることが基本となります。また、夜間や明け方に症状が強くなるという特徴があるため、「夜間装具(スプリント)療法」が非常に有効です。これは、就寝中に手首を安静な位置に固定する装具を装着する方法で、睡眠中に無意識に手首が曲がって神経を圧迫するのを防ぎ、症状を和らげます。次に、「薬物療法」も行われます。神経のダメージを修復する助けとなる「ビタミンB12」や、しびれを緩和する薬などが処方されます。痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬(湿布や内服薬)が用いられることもあります。これらの方法で改善が見られない場合、より直接的な治療として「ステロイド注射」があります。これは、手根管内に、炎症を強力に抑えるステロイド薬を注射する方法です。神経の腫れや周囲の組織のむくみを抑えることで、圧迫を解除し、劇的に症状が改善することがあります。ただし、効果は一時的なことも多く、繰り返し行うことには慎重な判断が必要です。これらの保存療法を数ヶ月続けても、症状が改善しない、あるいは、親指の付け根の筋肉(母指球筋)が痩せてきたり、ボタンがかけにくいといった、運動麻痺の症状が進行している重症例では、「手術療法」が勧められます。現在、主流となっているのは「手根管開放術」という日帰りで行える手術です。これは、局所麻酔のもと、手のひらを小さく切開し、神経を圧迫している分厚くなった靭帯(横手根靭帯)を切離することで、神経への圧迫を物理的に取り除く方法です。最近では、内視鏡を用いた、より傷の小さい手術も行われています。手術によって、しびれや痛みからの根本的な解放が期待できます。
整形外科で行われる手根管症候群の治療