喉の痛みに加えて、「声がかすれて出にくい」「食べ物や唾を飲み込む時に、つかえる感じがする、あるいはむせる」といった症状が伴う場合、それは単なる風邪のサインではなく、喉の奥深く、特に「喉頭(こうとう)」と呼ばれる部位に、何らかの異常が起きている可能性を示す危険信号です。このような症状がある場合は、迷わず耳鼻咽喉科を受診する必要があります。喉頭は、気管の入り口に位置し、呼吸の通り道であると同時に、発声の役割を担う「声帯」がある、非常に重要な器官です。この喉頭に強い炎症が起こると、声がれ(嗄声)や、飲み込みにくさ(嚥下障害)といった、特徴的な症状が現れます。特に注意が必要なのが、「急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)」です。喉頭蓋とは、食べ物を飲み込む際に、気管に蓋をして誤嚥を防ぐ、弁のような役割を持つ部分です。この喉頭蓋に細菌感染などで急激な炎症が起こると、赤くパンパンに腫れ上がり、気道を塞いでしまうことがあります。初期症状は、激しい喉の痛みと嚥下痛ですが、進行すると、声がこもって不明瞭になったり、「ヒューヒュー」という呼吸音がしたり、さらには呼吸困難に陥り、窒息する危険性もある、命に関わる緊急性の高い病気です。この病気は、内科の視診では診断が難しく、耳鼻咽喉科の内視鏡検査によってはじめて正確な診断が可能になります。また、声がれが主な症状で、痛みがそれほど強くない場合でも、油断は禁物です。「声帯ポリープ」や「声帯結節」といった、声の酷使によってできる良性の病変の可能性もありますが、長期間にわたって声がれが続く場合、特に喫煙歴のある中高年の男性では、「喉頭がん」の可能性も考えなければなりません。喉頭がんは、早期に発見できれば、声を温存したまま治療することも可能です。飲み込みにくさも、同様に重要なサインです。加齢による飲み込む力の低下(嚥下機能障害)のほか、食道の入り口や下咽頭にできたがんが、物理的に食べ物の通過を妨げている可能性もあります。声がれや飲み込みにくさは、喉が発する重大なSOSです。「そのうち治るだろう」と自己判断で放置せず、必ず喉の専門家である耳鼻咽喉科医の診察を受けるようにしてください。
声がれや飲み込みにくさを伴う喉の痛みは要注意