目尻に、痛みはないけれど、コロコロとした小さなしこりができた。触ると動くような、でも消えない。これは、マイボーム腺という脂腺の詰まりが原因で起こる「霰粒腫」の可能性が高い症状です。麦粒腫のような激しい痛みがないため、つい放置してしまいがちですが、徐々に大きくなって美容上の問題になったり、急に炎症を起こしたりすることもあるため、適切な対処法を知っておくことが大切です。霰粒腫は細菌感染ではないため、麦粒腫に使う抗菌薬の目薬は、原則として効果がありません。治療の基本は、詰まって固まってしまった油分を、いかにスムーズに排出させるか、という点にあります。家庭でできるセルフケアとして最も有効なのが、「温める(温罨法)」ことです。バターが熱で溶けるように、マイボーム腺に詰まった脂も、温めることで融解し、排出されやすくなります。具体的な方法としては、40度前後の蒸しタオルや、市販の温熱アイマスクなどを、1日に数回、5分から10分程度、まぶたの上に優しく当てます。特にお風呂の時間を利用して、湯船に浸かりながら行うと、リラックス効果も相まって非常に効果的です。温めた後は、清潔な指の腹で、目尻のしこりのある部分を、まつ毛の生え際に向かって、優しく圧迫するようにマッサージするのも良いでしょう。これにより、溶けた脂が外に押し出されるのを助けます。ただし、決して強く押しすぎないように注意してください。この温罨法とマッサージを根気よく続けることで、小さなしこりであれば、数週間から数ヶ月かけて自然に吸収され、消えていくことが期待できます。しかし、セルフケアを続けても、しこりが全く小さくならない、あるいは逆に大きくなってくる場合は、眼科での専門的な治療が必要となります。眼科では、まず炎症を抑えるためのステロイド点眼薬や眼軟膏が処方されることがあります。それでも改善しない大きなものに対しては、「ステロイド注射」という選択肢があります。これは、しこりの中に直接、強力な抗炎症作用を持つステロイド薬を注射し、肉芽腫を萎縮させる治療法です。そして、最終的な手段が「霰粒腫摘出術」という日帰りの小手術です。局所麻酔の後、まぶたの裏側から小さく切開し、しこりの内容物と、再発の原因となる袋ごと掻き出します。痛くないからと安易に考えず、気になるしこりは一度専門医に相談し、自分に合った治療法を選択することが重要です。