市販の制汗剤や生活習慣の改善だけでは、どうしてもコントロールできない、ひどい脇汗。その悩みが日常生活に支障をきたすレベルであれば、それは「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」という、医療機関で治療が可能な病気かもしれません。近年、この多汗症に対する治療法は飛躍的に進歩しており、皮膚科や美容皮膚科で、様々な選択肢の中から自分に合った治療を受けることができます。まず、保険適用で受けられる治療法として、いくつかの選択肢があります。一つは、「塩化アルミニウム溶液の外用」です。これは、高濃度の塩化アルミニウム溶液を就寝前に脇に塗布することで、汗腺に蓋をして発汗を物理的に抑える方法です。効果は高いですが、人によっては皮膚のかぶれや刺激感が出ることがあります。次いで、日本で保険診療として認可されている塗り薬として、「エクロックゲル」や「ラピフォートワイプ」があります。これらは、汗を出す指令を伝える神経伝達物質(アセチルコリン)の働きをブロックすることで、発汗を抑制します。ゲルや、シートで拭くタイプがあり、毎日使用することで効果を発揮します。そして、非常に効果的な治療法として広く行われているのが、「ボツリヌス・トキシン(ボトックス)注射」です。これは、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質を脇の皮下に注射することで、発汗を指令する神経の末端を麻痺させ、汗の分泌を強力にブロックする治療です。効果は4~6ヶ月程度持続し、多くの人が劇的な改善を実感できます。これも、重度の原発性腋窩多汗症と診断されれば、保険適用で受けることが可能です。さらに、保険適用外の自由診療となりますが、より根本的な治療法も存在します。「マイクロ波」を利用した治療法(ミラドライなど)は、皮膚の上からマイクロ波を照射し、その熱エネルギーで汗腺(エクリン汗腺・アポクリン汗腺の両方)を破壊する方法です。皮膚を切開する必要がなく、一度破壊された汗腺は再生しないため、半永久的な効果が期待できます。ひどい脇汗は、もはや「体質だから」と諦める必要のない時代です。一人で悩まず、専門医に相談することで、長年のコンプレックスから解放される道が開けるかもしれません。
皮膚科や美容皮膚科で受けられる脇汗治療