喉の痛みで病院を受診する際、内科と耳鼻咽喉科では、その診察のアプローチや用いる器具、そして治療法にどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴を理解しておくことは、自分の症状に合った、より適切な医療を受ける助けとなります。まず、「内科」での診察は、問診と身体診察が中心となります。医師は、喉の痛みだけでなく、発熱、咳、鼻水、頭痛、関節痛、腹部症状など、全身の状態を総合的にヒアリングします。そして、聴診器で胸の音を聞いて肺炎の有無を確認したり、お腹を触診したりします。喉の観察については、ペンライトで口の中を照らし、舌圧子(ぜつあつし)というヘラのような器具で舌を押さえて、口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)や咽頭後壁の状態を目で見て確認します。この視診で、喉の赤みや腫れの程度、膿の付着などを評価します。内科の強みは、このように全身を広く診ることで、喉の痛みが、風邪やインフルエンザといった全身性疾患の一部なのか、あるいは他の内科的疾患と関連していないかを判断できる点にあります。一方、「耳鼻咽喉科」での診察は、より喉に特化した、専門的なアプローチが特徴です。問診で喉の症状を詳しく聞いた後、内科と同様の視診も行いますが、耳鼻咽喉科の真骨頂は、そこからさらに踏み込んだ観察にあります。その代表的な武器が、「内視鏡(ファイバースコープ)」です。これは、先端にカメラが付いた細く柔らかい管を、鼻から挿入し、肉眼では決して見ることのできない、喉のさらに奥、つまり鼻の奥(上咽頭)、舌の付け根、そして声を出す声帯がある「喉頭(こうとう)」まで、直接モニターに映し出して観察することができます。これにより、急性喉頭蓋炎や声帯ポリープ、あるいは咽喉頭がんといった、命に関わる病気や、声のかすれの原因となる病変を、正確に診断することが可能になります。治療法においても違いがあります。内科が主に内服薬や点滴で全身に薬を作用させるのに対し、耳鼻咽喉科では、それに加えて、喉に直接薬を噴霧したり、ネブライザーという機器で薬剤を霧状にして吸入させたりといった、患部に直接働きかける局所的な治療を積極的に行います。この局所治療は、痛みを速やかに和らげる上で非常に効果的です。