病気別の対策・生活の工夫・患者会などの紹介

2025年8月
  • 整形外科で行われる手根管症候群の治療

    医療

    整形外科で手根管症候群と診断された後、具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。治療法は、症状の重さや、日常生活への支障の度合いによって異なりますが、基本的には、まず体に負担の少ない「保存療法」から始め、それでも改善しない場合に「手術療法」が検討されます。保存療法の第一歩は、「安静」と「生活指導」です。手首に負担のかかる作業(長時間のパソコン操作、工具の使用など)をできるだけ控え、手を休ませることが基本となります。また、夜間や明け方に症状が強くなるという特徴があるため、「夜間装具(スプリント)療法」が非常に有効です。これは、就寝中に手首を安静な位置に固定する装具を装着する方法で、睡眠中に無意識に手首が曲がって神経を圧迫するのを防ぎ、症状を和らげます。次に、「薬物療法」も行われます。神経のダメージを修復する助けとなる「ビタミンB12」や、しびれを緩和する薬などが処方されます。痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬(湿布や内服薬)が用いられることもあります。これらの方法で改善が見られない場合、より直接的な治療として「ステロイド注射」があります。これは、手根管内に、炎症を強力に抑えるステロイド薬を注射する方法です。神経の腫れや周囲の組織のむくみを抑えることで、圧迫を解除し、劇的に症状が改善することがあります。ただし、効果は一時的なことも多く、繰り返し行うことには慎重な判断が必要です。これらの保存療法を数ヶ月続けても、症状が改善しない、あるいは、親指の付け根の筋肉(母指球筋)が痩せてきたり、ボタンがかけにくいといった、運動麻痺の症状が進行している重症例では、「手術療法」が勧められます。現在、主流となっているのは「手根管開放術」という日帰りで行える手術です。これは、局所麻酔のもと、手のひらを小さく切開し、神経を圧迫している分厚くなった靭帯(横手根靭帯)を切離することで、神経への圧迫を物理的に取り除く方法です。最近では、内視鏡を用いた、より傷の小さい手術も行われています。手術によって、しびれや痛みからの根本的な解放が期待できます。

  • 逆流性食道炎が引き起こす喉の痛みと違和感

    医療

    胸焼けや、酸っぱいものがこみ上げてくる感じ(呑酸)。これらは、胃酸が食道に逆流することで起こる「逆流性食道炎」の典型的な症状です。しかし、この病気が引き起こす症状は、胸や胃の不快感だけではありません。実は、「なかなか治らない喉の痛み」や「長引く咳」、「声がれ」といった、一見すると喉の病気のように思える症状の裏にも、この逆流性食道炎が隠れていることが少なくないのです。この状態は、特に「咽喉頭酸逆流症(いんこうとうさんぎゃくりゅうしょう)」と呼ばれ、耳鼻咽喉科領域でも近年注目されています。なぜ、胃酸の逆流が喉の症状を引き起こすのでしょうか。そのメカニズムは二つ考えられています。一つは、胃酸が食道を越え、喉(咽頭・喉頭)まで直接達してしまうことによる、化学的な刺激です。胃の粘膜は、強力な酸である胃酸から自身を守るための防御機能を持っていますが、食道、そして喉の粘膜には、そのような機能はありません。そのため、逆流してきた胃酸に直接晒されると、喉の粘膜はただれて炎症を起こし、ヒリヒリとした痛みやイガイガ感、異物感といった症状が生じます。特に、声を出すための器官である声帯が炎症を起こすと、声がかすれてしまいます。もう一つのメカニズムは、食道への胃酸の逆流が、迷走神経という神経を介して、反射的に咳を引き起こす、というものです。この場合、胃酸が直接喉まで達していなくても、慢性的な咳の原因となります。逆流性食道炎による喉の症状の特徴は、風邪のように急に始まるのではなく、比較的ゆっくりと、そして慢性的に続くことです。特に、「朝起きた時に喉が痛い、声がかすれている」「食後に症状が悪化する」「横になると咳が出やすい」といった点に心当たりがあれば、その可能性を疑うべきです。診断のためには、まず耳鼻咽喉科で喉の状態を内視鏡で確認し、特徴的な炎症所見がないかを調べます。そして、逆流性食道炎が強く疑われる場合は、消化器内科で、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を行って、食道の炎症の程度などを評価します。治療の基本は、胃酸の分泌を強力に抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)の内服です。それに加え、食生活や生活習慣の改善が不可欠となります。脂っこい食事や甘いもの、アルコール、コーヒーなどを控える、食後すぐに横にならない、就寝時に上半身を少し高くして寝る、といった工夫が症状の改善に繋がります。

  • 目尻の違和感、ものもらい以外の可能性

    医療

    目尻に感じるゴロゴロとした異物感や、軽い痛み、腫れぼったさ。これらの症状が現れた時、真っ先に「ものもらい」を疑うのは自然なことです。しかし、目尻の不快な症状は、ものもらい以外にも、様々な原因によって引き起こされる可能性があります。自己判断で「ものもらい用の目薬」を使い続けても、原因が違えば症状は改善せず、かえって診断を遅らせてしまうことにもなりかねません。ものもらいと症状が似ている、いくつかの病気について知っておきましょう。まず、考えられるのが「結膜炎」です。ウイルスや細菌の感染、あるいはアレルギーによって、白目の表面を覆う結膜に炎症が起こる病気です。充血や目やに、涙が増えるといった症状が主ですが、炎症が強い場合や、目尻側の結膜に炎症が集中した場合、目尻の痛みや異物感として感じられることがあります。特に、アレルギー性結膜炎では、目のかゆみが強く、無意識にこすることで、目尻の皮膚に炎症を起こしてしまうこともあります。次に、「結膜結石」も異物感の原因となります。これは、結膜の細胞の残骸や分泌物などが固まって、石のように白~黄色の小さな粒になるものです。これがまぶたの裏側、特に目尻近くにできると、瞬きするたびに角膜(黒目)に当たり、ゴロゴロとした強い異物感や痛みを引き起こします。眼科で簡単に除去することができます。また、年齢と共にまぶたの皮膚がたるんでくると、まつ毛が眼球側に向かって生えてしまう「眼瞼内反症」や、まつ毛の生える向きが不規則になる「睫毛乱生(しょうもうらんせい)」が起こることがあります。これらの、本来外側を向いているはずのまつ毛が、目尻で目に触れることで、慢性的な痛みや異物感の原因となります。さらに、「ドライアイ」も、目の表面の涙が不安定になることで、角膜に細かい傷がつき、目尻のあたりにしょぼしょぼとした痛みや乾燥感を感じさせることがあります。そして、頻度は低いですが、涙を分泌する「涙腺」の炎症や、非常に稀ですが「涙腺がん」などの腫瘍が、目の奥、特に目尻側の上の方に痛みや腫れを引き起こすこともあります。このように、目尻の違和感の原因は多岐にわたります。症状が長引く場合や、視力の低下などを伴う場合は、安易に自己判断せず、必ず眼科を受診して、正確な原因を突き止めてもらうことが大切です。

  • 脇汗のニオイ、ワキガとの違いとセルフチェック

    知識

    ひどい脇汗の悩みに、しばしば付随してくるのが「ニオイ」の問題です。汗をかくと、ツンとした酸っぱいニオイや、雑巾のような生乾きのニオイが気になる、という経験は多くの人にあるでしょう。しかし、そのニオイが、いわゆる「ワキガ(腋臭症)」によるものなのか、それとも単なる汗のニオイなのか、その違いを正しく理解しておくことは、適切なケアを行う上で非常に重要です。まず、ニオイの原因となる汗腺が異なります。一般的な汗のニオイは、主に「エクリン汗腺」から分泌される汗が原因です。この汗は99パーセントが水分で、本来は無臭ですが、皮脂や垢と混じり合い、皮膚の常在菌によって分解されることで、酸っぱいような汗臭さを発生させます。一方、「ワキガ」のニオイは、「アポクリン汗腺」から分泌される汗が原因です。この汗には、脂質やタンパク質、アンモニアなどが含まれており、これを皮膚の常在菌が分解することで、鉛筆の芯や、香辛料、ネギ類に例えられるような、独特の強いニオイが発生します。つまり、ニオイの「質」が根本的に違うのです。では、自分がワキガかどうかをセルフチェックするには、どうすればよいでしょうか。いくつかのポイントがあります。まず、「耳垢の状態」を確認します。アポクリン汗腺は、耳の中にも存在しており、ここの活動が活発な人は、耳垢が湿ってキャラメルのようにベタベタしていることが多いと言われています。乾いたカサカサの耳垢の人は、ワキガの可能性は低いと考えられます。次に、「衣服の黄ばみ」です。アポクリン汗に含まれる色素成分(リポフスチン)が原因で、白いシャツの脇の部分が、洗濯しても落ちにくい、黄色や茶色っぽい汗ジミになりやすいのが特徴です。また、「家族にワキガの人がいる」場合も、遺伝的な要因が強いため、自分もワキガ体質である可能性が高まります。そして、最も確実なのは、自分の脇のニオイを直接確認することです。入浴後の清潔な状態で、脇にガーゼなどを数時間挟んでおき、そのニオイを嗅いでみることで、客観的に判断しやすくなります。もし、これらのチェック項目に複数当てはまるようであれば、ワキガの可能性が高いと言えるでしょう。ワキガの治療は、多汗症の治療とはアプローチが異なる場合があるため、悩んでいる場合は、皮膚科や形成外科などの専門医に相談することをお勧めします。

  • 突発性発疹は一度かかったらもう安心なのか

    知識

    「麻疹(はしか)やおたふくかぜのように、一度かかったら、もう二度とかかることはない」。突発性発疹に対して、多くの人がそのようなイメージを持っているかもしれません。我が子が一度、高熱と発疹、そしてあの壮絶な不機嫌を乗り越えたのだから、もうあの経験はしなくて済む、と。しかし、実はその認識は、半分正しく、半分は間違っているのです。ごく稀ではありますが、子どもは「二度、突発性発疹にかかる」可能性があります。この少し不思議な現象を理解するためには、突発性発疹の原因となるウイルスの正体を知る必要があります。突発性発疹を引き起こす主な原因ウイルスは、「ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)」です。ほとんどの赤ちゃんが、生後6ヶ月から1歳半頃までに、このHHV-6に初めて感染することで、典型的な突発性発疹を発症します。そして、一度感染すると、体にはHHV-6に対する免疫(抗体)が作られるため、同じHHV-6によって再び突発性発疹を発症することは、基本的にはありません。ここまでは、一般的な認識と一致しています。しかし、問題なのは、突発性発疹を引き起こすウイルスが、もう一種類存在するという点です。それが、「ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)」です。このHHV-7も、HHV-6と同様に、高熱とそれに続く発疹という、突発性発疹の症状を引き起こします。そして、HHV-6の免疫は、HHV-7の感染を防ぐことはできません。つまり、一度目にHHV-6による突発性発疹にかかった子どもが、その後、別の機会にHHV-7に初めて感染した場合、「二度目の突発性発疹」として、同様の症状を経験することがあり得るのです。一般的に、二度目の突発性発疹は、一度目に比べて症状が軽かったり、発疹がはっきりしなかったりと、非典型的な経過を辿ることも多いと言われています。また、ほとんどの子どもは、3歳頃までには、このHHV-6とHHV-7の両方に感染し、免疫を獲得してしまうため、幼児期を過ぎてから突発性発疹を心配する必要は、ほとんどなくなります。結論として、突発性発疹は二度かかる可能性はありますが、それは決して頻繁に起こることではありません。万が一、再び同様の症状が出たとしても、「そういうこともあるのだ」と知っておくだけで、保護者の心の準備は大きく変わってくるはずです。

  • 子どもの目尻のものもらい、家庭でのケアと注意点

    医療

    子ども、特に幼児期の子どものまぶたに、ぷくっとした腫れやしこりができることは、決して珍しいことではありません。目尻にできたものもらいに、親としては心配になるものですが、慌てず、適切な家庭でのケアを行うことが大切です。子どもの場合、大人とは異なる特有の注意点があります。まず、子どもに目尻のものもらいができた場合、その原因が麦粒腫(細菌感染)なのか、霰粒腫(腺の詰まり)なのかを、保護者が見分けるのは困難です。また、子どもは症状を正確に言葉で伝えることができません。そのため、自己判断で市販の目薬を使ったり、様子を見続けたりするのではなく、「まずは眼科を受診する」ことが大原則です。特に、視力の発達が著しい幼児期に、大きな霰粒腫ができて角膜を圧迫し、乱視を引き起こすと、将来的な弱視に繋がる可能性も否定できません。専門医による正確な診断と、適切な治療方針の決定が、子どもの目の健康を守る上で最も重要です。眼科を受診し、医師の指導のもとで家庭でのケアを行っていきます。子どもが嫌がらなければ、霰粒腫の場合には「温罨法」が有効です。お風呂の時間などを利用して、温かいガーゼで優しく目元を温めてあげましょう。しかし、子どもに麦粒腫ができて赤く腫れて痛がっている場合は、温めると逆効果になるため、医師の指示を仰ぎましょう。そして、保護者が最も気をつけなければならないのが、「子どもに患部を触らせない、こすらせない」ことです。子どもは、違和感があると無意識に目をこすってしまいます。汚れた手でこすることで、麦粒腫の炎症を悪化させたり、霰粒腫に細菌感染を合併させたりするリスクが非常に高くなります。また、掻き壊して皮膚に傷をつけてしまうこともあります。これを防ぐために、日頃から子どもの爪は短く切っておきましょう。そして、「目をこすっちゃダメだよ」と根気よく言い聞かせることが大切です。夜、寝ている間に無意識に掻いてしまう場合は、乳児用のミトンなどを着けさせるのも一つの方法です。目薬を処方された場合、子どもに点眼するのは一苦労ですが、これも治療の重要な一部です。子どもを仰向けに寝かせ、優しく下まぶたを引いて、目尻側に一滴垂らすようにすると、うまく入りやすいです。泣いて嫌がるかもしれませんが、遊びの延長のように工夫したり、褒めてあげたりしながら、根気強く続けましょう。