ひどい脇汗の悩みに対し、多くの人は制汗剤などの外側からのアプローチに頼りがちですが、実は日々の「食生活」も、汗の量や質に決して小さくない影響を与えています。体の内側からコンディションを整えることで、過剰な発汗を抑制し、ニオイを軽減させることが期待できるのです。では、具体的にどのような食事を心がければ良いのでしょうか。まず、避けるべきなのが、「発汗を促進する食べ物」です。その代表格が、唐辛子に含まれるカプサイシンなどの「香辛料」です。辛いものを食べると、味覚からの刺激で交感神経が興奮し、反射的に汗が出ます(味覚性発汗)。一時的なものですが、多汗に悩む人は、香辛料の強い食事は控えた方が賢明です。また、「カフェイン」を多く含むコーヒーや紅茶、エナジードリンクなども、交感神経を刺激し、発汗を促す作用があるため、摂りすぎには注意が必要です。次に、汗の「ニオイ」を強くする可能性のある食べ物にも気をつけましょう。ニンニクやニラなどの香りの強い野菜、そして肉類や乳製品といった「動物性脂肪・タンパク質」を過剰に摂取すると、体内で分解される過程でニオイの元となる物質が生成され、アポクリン汗腺から分泌される汗のニオイを強くすることがあります。一方で、積極的に摂りたいのが、「自律神経のバランスを整える」効果が期待できる栄養素です。例えば、大豆製品に含まれる「イソフラボン」は、女性ホルモン(エストロゲン)と似た働きをし、ホルモンバランスの乱れからくる自律神経の不調を整えるのに役立ちます。また、ビタミンB群は、神経伝達物質の合成に関わり、精神的な安定をサポートします。玄米や豚肉、レバーなどに豊富です。さらに、ストレスへの抵抗力を高める「ビタミンC」(パプリカ、ブロッコリーなど)や、神経の興奮を鎮める「カルシウム」(乳製品、小魚など)も意識して摂りたい栄養素です。食生活の改善だけで、ひどい脇汗が劇的に治るわけではありません。しかし、体を内側から健やかな状態に保つことは、過敏になった交感神経を落ち着かせ、汗の量や質をコントロールするための重要な土台となります。外側からのケアと並行して、日々の食事を見直すことが、根本的な体質改善への第一歩となるのです。