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二日酔いの果てに辿り着いた病院での発見
私は普段からお酒を飲むのが好きで、友人との飲み会や会社の懇親会では、ついつい飲みすぎてしまうことが少なくありませんでした。しかし、いつも翌朝はひどい二日酔いに苦しむのが常でした。激しい頭痛に吐き気、全身の倦怠感で、休日を棒に振ることも多々ありました。市販の二日酔い薬を飲んだり、ひたすらスポーツドリンクを飲んで寝たりと、様々な方法を試してきましたが、根本的な解決には至りませんでした。ある週末、前日の飲みすぎがたたって、過去最高にひどい二日酔いになってしまいました。頭はガンガン痛み、胃はムカムカして何も口にできない。ベッドから起き上がることもままならず、このままでは大切な予定をキャンセルせざるを得ない状況でした。その時、ふと「もしかして、病院に行けば何とかなるのでは?」という考えが頭をよぎりました。二日酔いで病院に行くなんて、なんだか大げさな気がして躊躇しましたが、このつらさから解放されたい一心で、私は近所の内科クリニックの門を叩いたのです。クリニックの待合室には、風邪をひいた人や体調の悪い人がたくさんいましたが、二日酔いで受診している人は見当たりませんでした。少し恥ずかしい気持ちもありましたが、看護師さんに症状を説明すると、すぐに診察室へ案内されました。先生は私の話を聞くと、「よくあることですよ。点滴で水分と栄養を補給して、吐き気止めを入れましょう」と、優しく言ってくださいました。その言葉に、私は心底安心したのを覚えています。点滴が始まると、腕から体へと水分や栄養がゆっくりと注入されていくのを感じました。最初はあまり変化を感じなかったのですが、30分ほど経った頃でしょうか、あれほどひどかった吐き気が少しずつ落ち着いてくるのを感じました。そして、点滴が終わる頃には、頭痛もだいぶ和らぎ、全身のだるさも軽くなっていることに気づきました。完全に回復したわけではありませんでしたが、少なくとも、自分で歩いて家に帰れるくらいにはなったのです。
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その喉の痛み、ストレスが原因かもしれません
喉の痛みを感じて病院へ行っても、検査では特に異常が見つからず、「気のせいではないか」と言われてしまう。しかし、本人にとっては、確かに喉に違和感や痛み、詰まった感じがある。このような、医学的な異常所見がないにもかかわらず、喉の不快な症状が続く場合、その原因は、もしかしたら「ストレス」にあるのかもしれません。このような状態は、「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」や、古くは「ヒステリー球」とも呼ばれ、決して珍しいものではありません。私たちの心と体は、自律神経によって密接に繋がっています。強いストレスや、不安、緊張、抑うつといった精神的な負担がかかり続けると、自律神経のバランスが乱れ、体の様々な部分に不調として現れます。喉は、食道や気管の筋肉が複雑に絡み合い、自律神経の支配を強く受けている、非常にデリケートな器官です。そのため、ストレスの影響が現れやすい場所の一つなのです。自律神経が乱れると、喉の筋肉が異常に緊張して、痙攣を起こしたり、知覚が過敏になったりします。これにより、「喉に何かボールが詰まっているような感じ(球塞感)」「締め付けられるような感じ」「イガイガ、チクチクする痛み」といった、多彩な症状が引き起こされると考えられています。これらの症状は、何かに集中している時は忘れているのに、ふと一人になった時や、リラックスしようとした時に、かえって強く感じられる、という特徴があります。また、症状が日によって変動したり、場所を変えたりすることも少なくありません。もちろん、このような症状がある場合、まずは耳鼻咽喉科を受診し、がんや炎症などの器質的な病気が隠れていないかを、内視鏡検査などでしっかりと確認してもらうことが大前提です。そこで異常がないと診断された上で、なお症状が続く場合に、初めて心因性の咽喉頭異常感症が疑われます。治療としては、まず「心配ない病気だ」と理解し、安心することが第一歩です。症状を気にしすぎることが、さらなるストレスとなり、悪循環を生むからです。その上で、ストレスの原因と向き合い、十分な休養を取る、適度な運動をする、趣味に没頭するなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが重要になります。場合によっては、抗不安薬や漢方薬が処方されたり、心療内科でのカウンセリングが有効なこともあります。
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喉の痛みに効く市販薬の選び方と限界
急な喉の痛みで、すぐに病院へ行けない時、ドラッグストアで手に入る市販薬は心強い味方です。しかし、棚にずらりと並んだ様々な製品の中から、自分の症状に合った薬を正しく選ぶのは、意外と難しいものです。市販薬を効果的に、そして安全に使うためには、その成分と働きを理解し、同時にその限界も知っておくことが大切です。市販の喉の痛みに効く薬は、大きく分けて「内服薬」と、トローチやスプレーなどの「外用薬」があります。まず、「内服薬」について見ていきましょう。総合感冒薬(風邪薬)にも、喉の痛みを和らげる成分は含まれていますが、喉の痛みが主症状の場合は、より特化した成分が配合された薬を選ぶのが効果的です。代表的な成分は二つあります。一つは、「トラネキサム酸」です。これは、喉の粘膜で炎症を引き起こす物質(プラスミン)の働きを抑えることで、喉の腫れや赤み、痛みを鎮める抗炎症作用があります。もう一つは、「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」といった、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。これらは、痛みや熱の原因となるプロスタグランジンの生成を抑えることで、強力な鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。ズキズキとした強い痛みや、発熱を伴う場合には、これらの成分が配合された薬が適しています。次に、「外用薬」です。トローチやのど飴には、「セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)」などの殺菌成分や、喉の炎症を抑える成分が含まれています。口の中でゆっくり溶かすことで、有効成分が直接喉の粘膜に作用し、唾液の分泌を促して喉を潤す効果も期待できます。スプレータイプの薬も、患部に直接薬剤を噴霧できるため、即効性があります。「アズレンスルホン酸ナトリウム」や「ポビドンヨード」などが代表的な成分です。しかし、これらの市販薬には「限界」があることを忘れてはなりません。市販薬は、あくまで一時的な症状の緩和を目的としたものであり、病気の原因そのものを治療するものではありません。特に、喉の痛みが細菌感染によるものである場合、市販薬には抗生物質は含まれていないため、根本的な治療にはなりません。市販薬を2~3日使用しても症状が全く改善しない、あるいは悪化する場合、唾も飲み込めないほどの激しい痛みがある場合、息苦しさや声がれを伴う場合などは、自己判断を続けずに、直ちに医療機関を受診してください。
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痛くないものもらいを繰り返さないための予防策
霰粒腫は、一度治っても、体質や生活習慣によっては何度も再発を繰り返すことがある、非常に厄介な病気です。まぶたのしこりに悩まされないためには、日頃からその原因となるマイボーム腺の詰まりを防ぐための予防策を意識することが何よりも重要になります。その基本となるのが、「まぶたを清潔に保つ」ことです。特に女性の場合、アイメイクがマイボーム腺の出口を塞いでしまう大きな原因となります。アイライナーやマスカラ、アイシャドウなどが、まぶたの縁に残ったままになっていると、油分のスムーズな排出が妨げられてしまいます。一日の終わりには、必ずアイメイク専用のリムーバーを使って、まつ毛の生え際まで丁寧に、そして優しくメイクを落とし切ることを習慣にしましょう。洗顔の際に、まぶたの縁を意識して洗うことも大切です。この、まぶたの縁を清潔にするケアを「リッドハイジーン(Lid Hygiene)」と呼び、霰粒腫やドライアイの予防・改善に非常に効果的とされています。次に、血行を促進し、油分の詰まりを予防する「温罨法(おんあんぽう)」を日常的に取り入れるのも良い方法です。毎日数分、蒸しタオルや温熱アイマスクで目元を温めることで、マイボーム腺に固まった油分が溶け出し、スムーズに排出されるのを助けます。リラックス効果も高いため、一日の疲れを癒す習慣としても最適です。また、「食生活の見直し」も間接的に影響します。脂っこい食事や、動物性脂肪の多い食事に偏ると、マイボーム腺から分泌される油分の質が変化し、粘り気が増して詰まりやすくなるとも言われています。魚に含まれるオメガ3脂肪酸などは、油の質をサラサラにする効果が期待できるため、青魚などを積極的に食事に取り入れると良いでしょう。さらに、ストレスや睡眠不足、疲労は、ホルモンバランスや免疫機能の乱れを介して、体全体のコンディションに影響を与えます。規則正しい生活を送り、心身の健康を保つことも、まぶたの健康を維持するためには欠かせない要素です。これらの地道な予防策を日々の生活の中に組み込むことで、厄介な「痛くないものもらい」の再発リスクを大きく減らすことができるのです。
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長引く手のしびれを放置してはいけない理由
手のしびれ。最初は、時々感じる程度の些細な違和感だったかもしれません。「そのうち治るだろう」「疲れているだけだ」と、自分に言い聞かせ、日々の忙しさにかまけて放置してはいないでしょうか。しかし、その長引く手のしびれ、特に手根管症候群によるしびれを放置し続けることには、あなたの将来の「手の機能」を損なう、深刻なリスクが潜んでいます。手根管症候群は、手首のトンネルで正中神経が圧迫される病気です。神経は、圧迫され続けると、徐々にダメージが蓄積し、その機能が失われていきます。初期段階では、しびれや痛みといった「感覚神経」の症状が主ですが、圧迫が長期化すると、筋肉を動かす「運動神経」にまで障害が及んでくるのです。その結果として現れるのが、「巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)」です。これは、指先の細かい、巧みな動きが困難になる状態で、日常生活の中に、様々な不便として現れ始めます。例えば、「シャツのボタンがかけにくくなった」「お箸で小さな豆が掴めない」「針に糸が通せない」「小銭を財布から取り出しにくい」といった症状です。これらは、単なる不器用さではなく、神経麻痺の始まりのサインなのです。さらに症状が進行すると、最も深刻な変化である「母指球筋(ぼしきゅうきん)の萎縮」が起こります。母指球筋とは、親指の付け根にある、ふっくらとした筋肉のことで、物をつまんだり、握ったりする上で、非常に重要な役割を果たしています。正中神経はこの筋肉を支配しているため、神経への圧迫が続くと、筋肉に指令が届かなくなり、栄養が行き渡らず、やせ細ってしまうのです。一度萎縮してしまった筋肉は、たとえ手術で神経の圧迫を取り除いたとしても、完全に元の状態に戻ることは非常に困難です。その結果、瓶の蓋が開けられない、ペットボトルをしっかり持てないといった、握力の低下が後遺症として残ってしまう可能性があります。手のしびれは、あなたの体が発している、助けを求める悲鳴です。感覚が鈍くなる、物が掴みにくくなるといった変化は、神経のダメージが進行している証拠です。取り返しのつかない状態になる前に、できるだけ早い段階で専門医を受診し、適切な治療を開始することが、あなたの「手」の未来を守るために、何よりも大切なことなのです。
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脇汗がひどいのはなぜ?そのメカニズムと原因
暑い日や運動をした時はもちろん、緊張した場面やストレスを感じた時、じっとりとシャツにシミを作る脇汗。多くの人が経験する自然な生理現象ですが、その量が異常に多かったり、季節や状況に関わらず常に悩まされたりする場合、それは単なる「汗っかき」では済まされない、深刻な悩みとなります。この「ひどい脇汗」は、一体どのようなメカニズムで起こるのでしょうか。その原因は、汗を分泌する汗腺の種類と、自律神経の働きに深く関係しています。私たちの体には、「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」という二種類の汗腺が存在します。体温調節のために全身に分布しているのがエクリン汗腺で、ここから出る汗は99パーセントが水分で、サラサラとしており無臭です。一方、アポクリン汗腺は、脇の下や陰部など特定の場所に存在し、タンパク質や脂質などを含む、少し粘り気のある汗を分泌します。この汗自体は無臭ですが、皮膚の常在菌によって分解されることで、ワキガ特有のニオイの原因となります。ひどい脇汗、特に局所的に多量の汗をかく「局所多汗症」の主な原因となるのは、エクリン汗腺の機能が過剰に活発になっている状態です。そして、この汗腺の働きをコントロールしているのが、私たちの意思とは関係なく体の機能を調整する「自律神経」です。自律神経は、活動時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」から成り立っています。発汗を促すのは、このうちの交感神経です。通常、交感神経は体温が上昇した時(温熱性発汗)や、運動をした時に活発になります。しかし、精神的なストレスや緊張、不安を感じた時(精神性発汗)にも、交感神経は強く刺激されます。プレゼンテーションや大事な会議の前に、脇や手のひらに汗をかくのはこのためです。ひどい脇汗に悩む人の多くは、この交感神経が、他の人よりも敏感に、そして過剰に反応しやすい体質であると考えられています。また、食生活の乱れやホルモンバランスの変動、肥満なども、自律神経のバランスを崩し、発汗を助長する要因となり得ます。つまり、ひどい脇汗は、体質的な交感神経の過敏さに、精神的な要因や生活習慣が複雑に絡み合って引き起こされる、根深い問題なのです。
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私の脇汗コンプレックスと灰色のTシャツが着られない日々
物心ついた時から、私は自分の脇汗の量に悩まされてきました。体育の授業の後、クラスメイトが涼しい顔をしている中で、私だけがTシャツの脇の部分に、くっきりと濃い色の汗ジミを作っている。そのことが、たまらなく恥ずかしかったのです。特に思春期を迎えた中学生の頃には、その悩みは深刻なコンプレックスへと変わっていきました。私のクローゼットから、ファッションの定番であるはずの灰色のTシャツや、水色のシャツが消えました。汗ジミが最も目立つこれらの色は、私にとって「禁断の色」だったのです。選ぶ服は、汗が目立たない白か黒、あるいはネイビーといった濃色ばかり。デザインや流行よりも、いかに汗ジミを隠せるかが、私の服選びの最優先事項でした。夏場は、制汗剤をスプレーし、さらに脇汗パッドを貼り付け、その上からインナーを着て、ようやく制服のシャツを着る、という重装備が欠かせませんでした。それでも、緊張する場面や、少し蒸し暑い教室では、じっとりと汗が滲み出てくる感覚に、常に怯えていました。授業中に手を挙げる時も、脇が見えないように、不自然に腕を体に引きつけて挙手する。友達と肩を組んで写真を撮る時も、脇が密着しないように、ほんの少しだけ距離を置く。そんな、他人から見れば取るに足らないような、しかし私にとっては必死の防御策を、毎日繰り返していました。一番つらかったのは、周囲の何気ない一言です。「すごく汗かいてるけど、大丈夫?」という、おそらくは親切心からの言葉ですら、私の心にはナイフのように突き刺さりました。自分の体が、自分の意思とは関係なく、恥ずかしいサインを発信し続けているような感覚。それは、自己肯定感を静かに、しかし確実に蝕んでいきました。脇汗のせいで、着たい服が着られない。脇汗のせいで、人との距離を気にしてしまう。脇汗のせいで、自分に自信が持てない。この、たかが汗、されど汗の問題が、私の青春時代に、どれほど暗い影を落としていたことか。同じ悩みを抱える人にしか分からない、深く根差したコンプレックスとの闘いは、大人になった今も、形を変えながら続いているのです。
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脇汗のニオイ、ワキガとの違いとセルフチェック
ひどい脇汗の悩みに、しばしば付随してくるのが「ニオイ」の問題です。汗をかくと、ツンとした酸っぱいニオイや、雑巾のような生乾きのニオイが気になる、という経験は多くの人にあるでしょう。しかし、そのニオイが、いわゆる「ワキガ(腋臭症)」によるものなのか、それとも単なる汗のニオイなのか、その違いを正しく理解しておくことは、適切なケアを行う上で非常に重要です。まず、ニオイの原因となる汗腺が異なります。一般的な汗のニオイは、主に「エクリン汗腺」から分泌される汗が原因です。この汗は99パーセントが水分で、本来は無臭ですが、皮脂や垢と混じり合い、皮膚の常在菌によって分解されることで、酸っぱいような汗臭さを発生させます。一方、「ワキガ」のニオイは、「アポクリン汗腺」から分泌される汗が原因です。この汗には、脂質やタンパク質、アンモニアなどが含まれており、これを皮膚の常在菌が分解することで、鉛筆の芯や、香辛料、ネギ類に例えられるような、独特の強いニオイが発生します。つまり、ニオイの「質」が根本的に違うのです。では、自分がワキガかどうかをセルフチェックするには、どうすればよいでしょうか。いくつかのポイントがあります。まず、「耳垢の状態」を確認します。アポクリン汗腺は、耳の中にも存在しており、ここの活動が活発な人は、耳垢が湿ってキャラメルのようにベタベタしていることが多いと言われています。乾いたカサカサの耳垢の人は、ワキガの可能性は低いと考えられます。次に、「衣服の黄ばみ」です。アポクリン汗に含まれる色素成分(リポフスチン)が原因で、白いシャツの脇の部分が、洗濯しても落ちにくい、黄色や茶色っぽい汗ジミになりやすいのが特徴です。また、「家族にワキガの人がいる」場合も、遺伝的な要因が強いため、自分もワキガ体質である可能性が高まります。そして、最も確実なのは、自分の脇のニオイを直接確認することです。入浴後の清潔な状態で、脇にガーゼなどを数時間挟んでおき、そのニオイを嗅いでみることで、客観的に判断しやすくなります。もし、これらのチェック項目に複数当てはまるようであれば、ワキガの可能性が高いと言えるでしょう。ワキガの治療は、多汗症の治療とはアプローチが異なる場合があるため、悩んでいる場合は、皮膚科や形成外科などの専門医に相談することをお勧めします。
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突発性発疹は一度かかったらもう安心なのか
「麻疹(はしか)やおたふくかぜのように、一度かかったら、もう二度とかかることはない」。突発性発疹に対して、多くの人がそのようなイメージを持っているかもしれません。我が子が一度、高熱と発疹、そしてあの壮絶な不機嫌を乗り越えたのだから、もうあの経験はしなくて済む、と。しかし、実はその認識は、半分正しく、半分は間違っているのです。ごく稀ではありますが、子どもは「二度、突発性発疹にかかる」可能性があります。この少し不思議な現象を理解するためには、突発性発疹の原因となるウイルスの正体を知る必要があります。突発性発疹を引き起こす主な原因ウイルスは、「ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)」です。ほとんどの赤ちゃんが、生後6ヶ月から1歳半頃までに、このHHV-6に初めて感染することで、典型的な突発性発疹を発症します。そして、一度感染すると、体にはHHV-6に対する免疫(抗体)が作られるため、同じHHV-6によって再び突発性発疹を発症することは、基本的にはありません。ここまでは、一般的な認識と一致しています。しかし、問題なのは、突発性発疹を引き起こすウイルスが、もう一種類存在するという点です。それが、「ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)」です。このHHV-7も、HHV-6と同様に、高熱とそれに続く発疹という、突発性発疹の症状を引き起こします。そして、HHV-6の免疫は、HHV-7の感染を防ぐことはできません。つまり、一度目にHHV-6による突発性発疹にかかった子どもが、その後、別の機会にHHV-7に初めて感染した場合、「二度目の突発性発疹」として、同様の症状を経験することがあり得るのです。一般的に、二度目の突発性発疹は、一度目に比べて症状が軽かったり、発疹がはっきりしなかったりと、非典型的な経過を辿ることも多いと言われています。また、ほとんどの子どもは、3歳頃までには、このHHV-6とHHV-7の両方に感染し、免疫を獲得してしまうため、幼児期を過ぎてから突発性発疹を心配する必要は、ほとんどなくなります。結論として、突発性発疹は二度かかる可能性はありますが、それは決して頻繁に起こることではありません。万が一、再び同様の症状が出たとしても、「そういうこともあるのだ」と知っておくだけで、保護者の心の準備は大きく変わってくるはずです。