急な喉の痛みで、すぐに病院へ行けない時、ドラッグストアで手に入る市販薬は心強い味方です。しかし、棚にずらりと並んだ様々な製品の中から、自分の症状に合った薬を正しく選ぶのは、意外と難しいものです。市販薬を効果的に、そして安全に使うためには、その成分と働きを理解し、同時にその限界も知っておくことが大切です。市販の喉の痛みに効く薬は、大きく分けて「内服薬」と、トローチやスプレーなどの「外用薬」があります。まず、「内服薬」について見ていきましょう。総合感冒薬(風邪薬)にも、喉の痛みを和らげる成分は含まれていますが、喉の痛みが主症状の場合は、より特化した成分が配合された薬を選ぶのが効果的です。代表的な成分は二つあります。一つは、「トラネキサム酸」です。これは、喉の粘膜で炎症を引き起こす物質(プラスミン)の働きを抑えることで、喉の腫れや赤み、痛みを鎮める抗炎症作用があります。もう一つは、「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」といった、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。これらは、痛みや熱の原因となるプロスタグランジンの生成を抑えることで、強力な鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。ズキズキとした強い痛みや、発熱を伴う場合には、これらの成分が配合された薬が適しています。次に、「外用薬」です。トローチやのど飴には、「セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)」などの殺菌成分や、喉の炎症を抑える成分が含まれています。口の中でゆっくり溶かすことで、有効成分が直接喉の粘膜に作用し、唾液の分泌を促して喉を潤す効果も期待できます。スプレータイプの薬も、患部に直接薬剤を噴霧できるため、即効性があります。「アズレンスルホン酸ナトリウム」や「ポビドンヨード」などが代表的な成分です。しかし、これらの市販薬には「限界」があることを忘れてはなりません。市販薬は、あくまで一時的な症状の緩和を目的としたものであり、病気の原因そのものを治療するものではありません。特に、喉の痛みが細菌感染によるものである場合、市販薬には抗生物質は含まれていないため、根本的な治療にはなりません。市販薬を2~3日使用しても症状が全く改善しない、あるいは悪化する場合、唾も飲み込めないほどの激しい痛みがある場合、息苦しさや声がれを伴う場合などは、自己判断を続けずに、直ちに医療機関を受診してください。