ひどい脇汗のほとんどは、特定の原因疾患がない「原発性多汗症」ですが、ごく稀に、何らかの病気が原因で二次的に汗の量が増えている「続発性多汗症」の可能性があります。特に、これまで汗で悩んだことがなかったのに、ある時から急に全身の汗が増えたり、脇汗が異常になったりした場合は、その背後に隠れた病気のサインではないかと疑ってみることも重要です。脇汗の増加を引き起こす可能性のある代表的な病気の一つが、「甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)」です。甲状腺は、体の新陳代謝を活発にするホルモンを分泌する器官ですが、このホルモンが過剰に作られると、常に体が活動状態となり、暑がりになったり、動悸がしたり、体重が減少したりといった症状と共に、大量の発汗が見られるようになります。次に、「糖尿病」も多汗の原因となり得ます。糖尿病によって自律神経に障害が起こると(糖尿病性神経障害)、体温調節機能がうまく働かなくなり、顔や上半身は異常に汗をかくのに、下半身は汗をかかない、といった特徴的な発汗異常が見られることがあります。また、女性の場合、「更年期障害」も多汗の大きな原因です。女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって自律神経のバランスが乱れ、体温調節がうまくいかなくなることで、突然顔がカッと熱くなって大量の汗が噴き出す「ホットフラッシュ」という症状が現れます。これは脇汗の増加にも繋がります。その他にも、褐色細胞腫という副腎の腫瘍、結核などの慢性的な感染症、パーキンソン病などの神経疾患、あるいは服用している薬の副作用(抗うつ薬や解熱鎮痛薬の一部など)によって、発汗量が増加することもあります。これらの続発性多汗症を見分けるポイントは、脇汗だけでなく、他の全身症状を伴っているかどうかです。急な体重の変化、動悸、手の震え、異常な喉の渇き、体のほてりなど、汗以外の体調変化に気づいたら、まずは内科や内分泌内科、婦人科といった、それぞれの専門科を受診し、原因となっている病気がないかを調べてもらうことが最優先となります。脇汗は、時に体からの重要なメッセージでもあるのです。