手のしびれを感じた時、第一選択として整形外科を訪れるのが一般的ですが、症状によっては「神経内科」の受診がより適切、あるいは必要な場合があります。整形外科が骨や関節といった「器」の問題を主に見るのに対し、神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、筋肉といった「神経システム」そのものの病気を専門とします。では、どのような場合に神経内科を訪れるべきなのでしょうか。まず、しびれが手だけでなく、足にも同時に現れている場合や、体の左右両側に対称的に症状が出ている場合は、神経内科での精査が勧められます。これは、糖尿病性神経障害や、ギランバレー症候群など、全身の末梢神経に影響が及ぶ病気の可能性が考えられるためです。次に、手のしびれに加えて、細かい動きがしにくい(巧緻運動障害)、筋肉が痩せてきた、筋肉がピクピクと痙攣するといった、運動神経に関わる症状が顕著な場合も、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患との鑑別が必要となるため、神経内科が専門となります。また、しびれの原因が、手首の問題(手根管症候群)なのか、肘の問題(肘部管症候群)なのか、あるいは首(頸椎症性神経根症)や脳の問題なのか、はっきりしない場合にも、神経内科医は、神経伝導速度検査や針筋電図といった、より専門的な電気生理学的検査を用いて、神経のどこに障害があるのかを正確に突き止めることができます。そして、最も注意すべきなのが、手のしびれと共に、「ろれつが回らない」「めまいがする」「物が二重に見える」「顔の片側が麻痺する」「まっすぐ歩けない」といった症状が突然現れた場合です。これは、脳梗塞や脳出血といった、脳血管障害(脳卒中)の危険なサインかもしれません。この場合は、一刻の猶予もありません。すぐに神経内科、あるいは脳神経外科のある救急病院を受診する必要があります。このように、手のしびれという一つの症状でも、その背景は様々です。典型的な手根管症候群とは異なる特徴的な症状を伴う場合は、神経システム全体の専門家である神経内科への相談が、正しい診断への鍵となります。