痛みのないまぶたのしこり、霰粒腫を疑って眼科を受診した場合、どのような診察や治療が行われるのでしょうか。事前に流れを知っておくことで、安心して診察に臨むことができます。まず、眼科医は「問診」から始めます。いつからしこりに気づいたか、大きさの変化はあるか、痛みや赤み、かゆみ、目やになどの他の症状はないか、コンタクトレンズの使用の有無などを詳しく尋ねます。この問診は、麦粒腫や他の病気との鑑別を行う上で重要な情報となります。次に、「細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)」という専門的な顕微鏡を使って、まぶたの状態を詳細に観察します。この検査では、しこりの大きさや位置、硬さ、そしてマイボーム腺の開口部の状態などを拡大して確認することができます。まぶたを裏返して(反転させて)、結膜側の状態を診ることもあります。通常、これらの診察で霰粒腫の診断は確定しますが、非常に大きい場合や、何度も再発を繰り返す場合、悪性腫瘍が疑われる場合などには、組織の一部を採取して調べる「生検」が行われることもあります。診断が確定した後の治療法は、霰粒腫の大きさや、炎症の有無、患者さんの希望などによって、いくつかの選択肢があります。しこりが小さく、自覚症状もほとんどない場合は、経過観察となることも少なくありません。その上で、前述したような温罨法などのセルフケアが指導されます。しこりが大きい、あるいは炎症を伴っている場合は、「薬物療法」が選択されます。非感染性の霰粒腫自体に抗菌薬は効きませんが、感染の合併を防ぐ目的で抗菌点眼薬が処方されたり、炎症を抑えるためにステロイドの点眼薬や眼軟膏が用いられたりします。薬物療法で改善が見られない、あるいはしこりが非常に大きい場合には、より積極的な治療が行われます。一つは「ステロイド注射(ケナコルト注射)」です。しこりの中に直接、炎症を強力に抑えるステロイド薬を注射する方法で、切開することなくしこりを小さくする効果が期待できます。そして、最終的な手段となるのが「霰粒腫摘出術」です。これは、局所麻酔をした上でまぶたを切開し、原因となっているしこりの内容物と、それらを包んでいる袋(被膜)を掻き出す手術です。通常、まぶたの裏側から切開するため、皮膚の表面に傷跡が残る心配はほとんどありません。手術自体は10~15分程度で終わる日帰り手術です。