もう一ヶ月以上、まともに眠れた記憶がなかった。ベッドに入ると目が冴え、仕事の失敗や将来への不安が次々と頭を駆け巡る。ようやくウトウトし始めても、物音ですぐに目が覚めてしまう。朝は鉛のように重い体を引きずって起き上がり、日中は集中力が続かず、簡単なミスを繰り返す。そんな悪循環に、心身ともに疲れ果てていました。最初は「そのうち眠れるだろう」と高を括っていましたが、状況は悪化する一方。意を決してスマートホンで「眠れない、何科」と検索し、自宅近くの心療内科のウェブサイトを見つけました。予約の電話をかける指が、自分でも驚くほど震えていたのを覚えています。診察当日、待合室で自分の名前が呼ばれるのを待つ間、心臓は早鐘のように鳴っていました。一体何を話せばいいのだろう、こんなことで来ていいのだろうか。そんな不安で頭がいっぱいでした。しかし、診察室に入ると、穏やかな表情の先生が「今日はどうされましたか?」と優しく問いかけてくれました。私は、堰を切ったように話し始めました。いつから眠れないのか、どんな時に不安になるのか、日中どれだけつらいのか。途中で言葉に詰まると、先生は静かに頷きながら待ってくれました。誰にも言えなかった苦しさを全て吐き出すと、それだけで涙が出そうになりました。先生は私の話を一通り聞いた後、「それはつらかったですね。よくここまで頑張りました」と言ってくれました。その一言で、張り詰めていたものが一気に溶けていくのを感じました。診断は、ストレスによる不眠症。先生は、まずは生活リズムを整えるためのアドバイス(睡眠衛生指導)と、どうしても眠れない時にだけ飲む、ごく弱い睡眠薬を処方してくれました。「薬はあくまでお守りです。焦らず、少しずつ眠れる体を取り戻していきましょう」という言葉に、深く安心しました。病院に行くまではあれほど怖かったのに、帰る頃には、暗闇の中に一筋の光が差し込んだような気持ちでした。一人で抱え込まず、専門家に相談する勇気が、こんなにも心を軽くしてくれるのだと知った、忘れられない一日です。