今回の事例研究では、二週間にわたって熱が下がらず、最終的に入院加療が必要となった三十代後半の男性、Aさんのケースを分析します。Aさんは当初、乾いた咳と微熱を感じていましたが、仕事の忙しさから市販の風邪薬で対応していました。しかし、一週間経っても熱が下がらないばかりか、夜間になると三十九度まで上昇するようになり、近所のクリニックを受診しました。そこで処方されたのは一般的なマクロライド系の抗生物質でしたが、服用から三日経っても熱は一向に下がらず、激しい咳のせいで睡眠不足に陥り、食事も喉を通らない状態になりました。Aさんはここで再度、同じクリニックを受診しましたが、この「二度目の受診」の遅れが、その後の病状を左右することになりました。Aさんの場合、体内のマイコプラズマは完全なマクロライド耐性菌であり、最初の薬は全く効果を発揮していなかったのです。ようやく紹介先の総合病院で精密検査を受けたときには、両肺に広範な肺炎像が見られ、胸水も貯留していました。治療として即座にニューキノロン系抗菌薬の点滴と、炎症を抑えるためのステロイド投与が開始されました。結果、入院から三日目にしてようやく熱が平熱に戻り、二週間にわたる高熱の苦しみから解放されました。この事例から学べる教訓は、マイコプラズマ肺炎において「熱が下がらない」という状況を軽視してはいけない、という点です。特に大人の場合、多少の熱があっても動けてしまう「ウォーキング・ニューモニア」の特性が仇となり、受診を先延ばしにしている間に肺の損傷が進んでしまいます。マイコプラズマは発症初期に適切な薬を使えば、これほどまでの重症化は防げた可能性が高いのです。もし、風邪の症状から熱が長引き、咳がひどくなる兆候があれば、その時点でマイコプラズマを疑い、レントゲン検査が可能な医療機関を選ぶべきです。また、一度処方された薬で「熱が下がらない」と感じたら、即座に医師にその旨を伝え、薬の系統を変更する提案を受けることが、重症化の連鎖を断ち切る唯一の方法です。Aさんは退院後、以前のような呼吸機能を取り戻すまでに数ヶ月のリハビリを要しました。熱が下がらない期間の長さは、その後の回復期間に比例します。早期発見と、治療効果への迅速な評価こそが、マイコプラズマという狡猾な細菌に対抗するための最大の防衛策であると言えるでしょう。
熱が下がらないマイコプラズマ患者の事例から学ぶ早期発見の重要性