私の瞼の裏に、ある日突然、不穏な影が忍び寄った。最初は些細な違和感だった。瞬きをするたびに、何かが触れるような感覚。やがてそれは、小さな砂粒が入り込んだような不快感へと変わり、最終的にはチクチクとした痛みを伴うようになった。しかし、困ったことに、鏡を見ても私の目はいつも通り。赤みも腫れも全くなく、外見上はどこにも異常が見当たらないのだ。この見えない敵の正体が何なのか、私は途方に暮れていた。友人や家族に相談しても、「ものもらいなら腫れるはずだよ」「気のせいじゃない？」という返答ばかり。しかし、この不快感は確実に私の集中力を奪い、日常生活にも支障をきたし始めていた。特に、パソコン作業中に目が疲れてくると、痛みが増すような気がした。不安に駆られ、私はインターネットで「瞼の裏 痛み 腫れてない」といったキーワードで検索を始めた。そこで見つけたのが「内側ものもらい」という情報だった。正式名称は「内麦粒腫（ないばくりゅうしゅ）」。瞼の裏側にあるマイボーム腺という油を分泌する腺が細菌に感染し、炎症を起こすものだという。外側ものもらいのように瞼の表面が腫れるのではなく、内側で炎症が起こるため、外からは見えにくいのが特徴だと書かれていた。まさに私の症状そのものだった。この情報にたどり着いた時、やっと自分の抱えている問題の正体がわかったような気がした。しかし、原因がわかっても、どうすれば良いのかはまだ手探りだった。市販の目薬で済ませられるのか、それとも病院に行くべきなのか。迷った末、私は専門家である眼科医の意見を聞くのが一番だと判断し、すぐに予約を入れた。目はデリケートな器官であり、自己判断で症状を悪化させることだけは避けたかったのだ。診察室では、医師が私の目を丁寧に診てくれた。瞼を裏返して炎症の様子を確認し、やはり内側ものもらいであると診断された。医師は、内側ものもらいは放っておくと症状が悪化し、膿が溜まって切開が必要になる場合もあるため、早期の治療が重要だと説明してくれた。そして、抗菌作用のある点眼薬と、炎症を抑えるための内服薬が処方された。薬を使い始めて数日後、劇的な変化が訪れた。あんなに私を悩ませていた目の痛みと不快感が、嘘のように消え去っていたのだ。