近年の呼吸器感染症の流行において、大人が最も直面する難題は、高熱と咳という共通の症状から、それがインフルエンザなのか、それとも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)なのかを自ら判断しなければならないという点です。どちらもウイルス性の疾患であり、初期症状は酷似していますが、臨床的な特徴を詳細に分析すると、いくつかの相違点が浮かび上がります。まず、インフルエンザの最大の特徴は、その「急激な発症」にあります。朝は元気だった人が、昼過ぎには突然の悪寒と共に四十度近い熱を出し、関節痛や筋肉痛で動けなくなるような「一気に叩きつけられる」感覚が典型的です。咳も出ますが、それ以上に全身の脱力感や高熱のインパクトが強く、発症から二十四時間から四十八時間で症状のピークが訪れます。対して、新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザに比べると「段階的な悪化」を辿る傾向があります。最初は喉の違和感や軽い微熱から始まり、数日かけて徐々に咳が強まり、熱も上がってくるという「ジワジワと忍び寄る」展開が多く見られます。また、新型コロナでは味覚や嗅覚の異常といった特徴的な随伴症状が知られていますが、最近の変異株ではそれらの頻度は下がり、代わりに激しい咽頭痛や、熱が下がった後にしつこく残る「遷延性の咳」が目立っています。さらに、マイコプラズマ肺炎との見分けも重要です。インフルエンザやコロナが三日から五日で解熱に向かうことが多いのに対し、マイコプラズマ肺炎は一週間以上熱が下がらず、咳も日ごとに「肺の底から響くような音」に変わっていきます。大人がこれらの疾患を正確に見分けるためには、流行の時期、周囲の感染状況、そして自身のワクチンの接種歴を考慮に入れる必要がありますが、最終的には抗原検査キットや医療機関でのPCR検査といった「科学的な証明」に勝るものはありません。自己判断で「去年もインフルだったから今回もそうだろう」と思い込み、不適切な薬を服用することは、重症化を招くだけでなく、周囲への感染拡大を許す最大の要因となります。特に大人の場合、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持っていると、新型コロナであってもインフルエンザであっても、数時間で肺炎に移行し、重篤な呼吸不全に陥るリスクがあります。高熱と咳が出た瞬間に、私たちは自分を「感染源」として規定し、他人との接触を遮断した上で、どのウイルスが自分の細胞を攻撃しているのかを正確に特定するためのプロセスを開始しなければなりません。見分けることの目的は安心するためではなく、正しい武器(治療薬)を選択し、社会への影響を最小限に留めるための、大人の責任ある行動なのです。
大人の高熱と咳からインフルエンザと新型コロナを見分ける