手足口病の熱が下がり、あの激しい痛みからも解放されて日常が戻ってきた頃、多くの大人をさらなる不安に陥れる現象が起きます。それが、皮膚の「落屑(らくせつ)」と「爪甲脱落(そうこうだつらく)」です。発症から一、二週間が経ち、水疱が枯れてきた頃、手のひらや足の裏の皮が、まるで日焼けの後のように大きく剥がれ始めることがあります。中には指先から手のひら全体にかけて一気に剥けるケースもあり、見た目の異様さに「何か別の病気が始まったのではないか」と驚かれる方が非常に多いのですが、これは手足口病の典型的な快復プロセスの一つです。ウイルスの攻撃を受けた皮膚の表面が、新しく再生された下の皮膚に押し出されて剥がれ落ちているだけですので、無理に剥がそうとせず、自然に落ちるのを待ってください。乾燥が気になる場合は、低刺激の保湿クリームを塗り、皮膚を保護することが大切です。そして、さらに驚くべきは、発症から一ヶ月から二ヶ月後に訪れる爪の変化です。ある日突然、爪の根元に横線が入ったり、根元が白く浮き上がってきたりし、最終的に爪がポロリと剥がれ落ちることがあります。これを爪甲脱落症と呼びますが、これも手足口病のウイルスが爪を作る組織(爪母)に一時的なダメージを与えたために起こる遅延性の症状です。痛みはほとんどないことが多いですが、剥がれた後の爪床は非常にデリケートです。剥がれそうな爪がある場合は、無理に引きちぎらず、絆創膏などで固定して自然に外れるのを待ちましょう。新しい爪はすでに下から生え始めていますので、半年もすれば元通りの綺麗な爪に戻ります。この時期に大切なのは、栄養バランスの取れた食事を心がけ、爪の材料となるタンパク質や亜鉛、ビタミンを意識的に摂取することです。また、皮膚や爪の異常が起きている間は、周囲にウイルスを広める段階はほぼ過ぎていますが、爪の中にウイルスが残存しているという説もあるため、念のため念入りな手洗いは継続しましょう。外見的な変化は、人前に出る仕事をしている大人にとっては大きなストレスになりますが、これは自分の体が過酷なウイルスとの戦いに勝利し、組織を新しく作り替えている「再生の証」でもあります。この長い余韻も含めての手足口病であることを受け入れ、焦らずに元の健やかな肌と爪を取り戻す時間を慈しんでください。もし、剥がれた部位から出血したり、膿が出たりといった異常が見られた場合には、二次感染の可能性があるため、皮膚科を受診することをお勧めします。手足口病は、完治したと思ってからが本当の「自分の体への労わり」の期間なのです。自分の体が頑張ってくれたことに感謝しながら、新しい皮膚と爪が育つのをゆっくりと見守っていきましょう。
完治後に訪れる皮膚の剥離と爪の脱落への正しい向き合い方