あれは記録的な猛暑が続いていた七月の終わりのことでした。二歳になる息子が保育園から手足口病をもらってきたのがすべての始まりです。息子は数日で熱が下がり、口の痛みを訴えながらもゼリーを食べて元気を取り戻していきましたが、その三日後、私の体に異変が起きました。夕方、突然の激しい悪寒に襲われ、体温を測ると一気に三十九点五度まで跳ね上がりました。最初はただの風邪かと思っていましたが、翌朝、手のひらに違和感を覚え、見てみると小さな赤い発疹が無数に浮かび上がっていました。そこからはまさに地獄のような一週間でした。まず、喉の痛みが想像を絶するものでした。喉の奥に無数の刃物が刺さっているような感覚で、自分の唾液を飲み込むたびに全身がビクッと跳ね上がるほどの痛みが走ります。冷たい水一杯を飲むのにも決死の覚悟が必要で、喉を潤すことさえ苦行となりました。さらに、手のひらと足の裏の発疹がパンパンに膨れ上がり、何かに触れるたびに電気が走るような鋭い痛みに襲われました。スマホを操作することも、ドアノブを回すこともできず、足の裏はまるで剣山の上を歩いているような感覚で、トイレに行くことさえ這って進まなければならないほどでした。病院を受診しましたが、医師からは「特効薬はないので、痛み止めで耐えるしかありません」と告げられ、絶望的な気分になりました。処方されたロキソニンを飲んでも、喉の激痛がわずかに和らぐ程度で、食事は一切喉を通らず、一週間で体重が四キロも減少しました。夜も痛みと熱で一時間おきに目が覚め、暗い部屋で一人、いつ終わるかわからない苦しみに涙が出ました。子供はあんなにケロッとしていたのに、なぜ大人である私がこれほどまでボロボロになるのかと、手足口病の残酷さを痛感しました。発症から五日目、ようやく喉の痛みが引き始め、少しずつお粥を口にできるようになったときは、食べ物の味に心から感動しました。しかし、嵐が過ぎ去った後も災難は続きました。手のひらと足の裏の皮が、日焼けの後のようにズル剥けになり、接客業をしていた私は手袋なしでは仕事ができない状態が二週間ほど続きました。さらに一ヶ月後、今度は手の爪の根元が浮き始め、最終的には三本の爪が根元から剥がれ落ちました。新しい爪が生えてくるまでには三ヶ月近くかかり、手足口病という病気のしぶとさを思い知らされました。もし、子供が手足口病にかかったお父さん、お母さんがこれを読んでいるなら、どうか自分のことを「自分は大丈夫」と思わないでください。大人の手足口病は、子供のそれとは比較にならない破壊力を持っています。タオルの共有を避け、おむつ替えの後は手首まで石鹸で洗うこと。それでもうつるときはうつりますが、最悪の事態を想定してゼリー飲料や鎮痛剤をストックしておくことを強くお勧めします。私のこの過酷な体験が、誰かの備えになることを願ってやみません。