近年、新型コロナウイルスやインフルエンザの流行を経て、医療現場での風邪診療のスタイルは劇的に変化しました。かつてのように、少し喉が痛ければすぐに病院の待合室で順番を待つ、という光景は過去のものとなりつつあります。現在の医療機関、特に内科クリニックでは、発熱や風邪症状のある患者を「発熱外来」として別枠で扱うのが一般的です。このような状況下で、患者が「何科に行くべきか」を判断する前にすべき重要な行動が一つあります。それは、必ず事前に「電話で受診の可否を確認する」ことです。いきなり窓口を訪れても、感染対策の観点から受診を断られたり、屋外での待機を求められたりすることがあるため、事前の連絡はもはや社会的なマナーとなっています。ある事例では、激しい喉の痛みを訴えて直接耳鼻科を訪れた患者が、受付で「発熱がある場合はまず指定の発熱外来(内科)を受診してください」と促され、二度手間になってしまったケースがありました。これは、耳鼻科の処置が飛沫を発生させやすいため、検査で陰性が確認されるまで慎重になる病院が多いという現実を反映しています。逆に、咳がひどくて内科を受診したところ、肺には異常がなく、実は鼻水が喉に流れる「後鼻漏」が原因であることが判明し、結局耳鼻科での処置が必要になったという事例も多々あります。こうした「科の跨ぎ」を最小限にするためには、電話の段階で自分の症状を詳しく伝えることが不可欠です。例えば「熱はないが、喉の痛みが非常に強く、以前にも扁桃炎を起こしたことがある」と伝えれば、耳鼻科側も受診を受け入れやすくなりますし、「家族に陽性者がいて、自分も高熱がある」と伝えれば、内科でのドライブスルー検査などがスムーズに案内されます。また、最近では自治体が運営する「受診相談センター」が、今の症状なら何科に行くべきか、どの病院が今日受け入れているかといった情報を一括で提供しており、これを活用することも非常に有効です。現代の風邪診療は、単に「どこでもいいから診てもらう」という時代から、情報のやり取りを通じて「適切なタイミングで適切な場所へ向かう」という、高度な情報リテラシーが求められる時代へとシフトしています。風邪は何科という問いの答えは、今やインターネットの検索結果だけでなく、地域の医療提供体制や現在の流行状況とも密接にリンクしていることを忘れてはなりません。
感染症流行期における風邪診療の現状と患者への対応事例