日々、多くの患者さんと向き合っている形成外科医の立場から、子供のワキガ、特に保険適用での治療を希望される親御さんに伝えたい重要なポイントをお話しします。まず、医学界におけるワキガ手術のゴールは、単にニオイをゼロにすることではなく、患者さんが「自分自身のニオイを気にせずに社会生活を楽しめる状態」にすることです。保険適用となる剪除法は、長い歴史の中で確立された最も信頼性の高い術式です。脇の皮膚を数センチ切り、その裏側にあるアポクリン汗腺をハサミで一つずつ削ぎ落としていくこの方法は、再発が極めて少なく、ニオイの改善率も九十パーセントを超えます。これほど高度な手術が保険診療で提供されているのは、日本が国民皆保険制度を採用しており、腋臭症を単なる美容上の問題ではなく、精神的なQOLを左右する疾患として認めているからです。私が診察で特に重視するのは、本人のモチベーションです。子供の場合、親が気にして連れてくるケースが多いですが、手術はそれなりの痛みや術後の不便を伴います。本人がニオイに悩み、「手術をしてでも治したい」という強い自覚がない場合、術後のケアがうまくいかず、傷跡が目立ってしまうリスクもあります。年齢については、よく「小学生でもできますか?」と聞かれますが、私は第二次性徴のピークを過ぎ、ある程度身体が出来上がる十五歳前後を一つの目安としています。しかし、強い劣等感から不登校気味になっている場合などは、例外的に早い段階での手術を検討することもあります。保険適用になるための審査は、現在のガイドラインに沿って厳格に行いますが、決して「意地悪をして適用外にする」ためのものではありません。医学的に見て、手術が必要なレベルであるかを客観的に判断するためのものです。また、自由診療のミラドライ等と比較して、保険手術は切開を伴うため傷跡の心配をされる親御さんも多いですが、形成外科医は「傷をいかに綺麗に治すか」の専門家でもあります。シワに沿った切開や丁寧な縫合によって、数年経てばほとんど目立たなくなることがほとんどです。費用面では、保険の三割負担であれば両脇で四万円から五万円程度ですが、子供の場合は助成制度によってさらに負担が軽くなります。高額な機器を使った自由診療に目が向きがちですが、医学的なエビデンスとコストパフォーマンスの両面から見て、保険適用の剪除法は依然として世界最高水準の治療法であると自負しています。まずは、お近くの認定医が在籍する形成外科を訪ね、本人の今の状態を正しく評価してもらうことから始めてください。