「先生、どうして私はこんなにものもらいを繰り返すのでしょうか」診察室でそう訴える患者さんを詳しく診査していくと、その原因が目そのものではなく、全身の健康状態に深く根ざしているケースが多々あります。専門医として特に注意深く観察するのが、糖尿病との関連性です。糖尿病は血液中の糖濃度が高くなる病気ですが、これは単に血が甘くなるということではなく、体全体の免疫システム、特に白血球の貪食能や殺菌能を著しく低下させることを意味します。その結果、本来であればまぶたの表面にいても悪さをしない常在菌が、容易に組織内に侵入して炎症を引き起こし、一度治ってもすぐに別の場所で感染が再発するという「感染の連鎖」が起きてしまうのです。また、脂質異常症を抱えている方も、マイボーム腺から出る脂が凝固しやすいため、霰粒腫を繰り返し発症しやすい傾向にあります。さらに近年注目されているのが、酒さ(しゅさ)という皮膚疾患との関係です。顔の赤みや火照りが特徴のこの病気は、しばしば「眼型酒さ」を合併し、慢性的な眼瞼炎や繰り返すものもらいを引き起こします。もし、ものもらいの再発に加えて、頬の赤みやニキビのような湿疹が顔に出ている場合は、皮膚科との連携が必要になります。加えて、更年期以降の女性においては、女性ホルモンの低下によって粘膜や分泌腺の働きが弱まり、ドライアイと併発する形で、ものもらいを繰り返す事例も少なくありません。私は患者さんに「まぶたは全身のバロメーターです」と伝えています。局所的な処置で済まないほど繰り返すのであれば、それは体が内側からのメンテナンスを求めているサインです。たかがものもらいと侮り、眼科だけで解決しようとするのではなく、必要に応じて血液検査を行い、内科的なアプローチを組み合わせることが、完治への最短距離となることがあります。特に、急にものもらいができやすくなった、傷の治りが遅くなったと感じる方は、自身の代謝機能や免疫バランスを一度総点検してみることを強くお勧めします。
専門医が語る繰り返すものもらいと全身疾患の関係